セルソーティング
Cell sorting
詳細
概要
セルソーティングは、細胞を一つずつ測定・判別し、目的の細胞だけを分離して取り出す技術です。細胞計測・解析は病気の診断などの基盤技術であり、選び分けた細胞は研究や、細胞を治療に用いる再生・細胞医薬品の製造に使われます。日立製作所とシンクサイトの発表では、白血病向けCAR-T療法が2017年に米国、2019年に日本で承認されるなど、細胞を用いる再生・細胞医薬品の実用化が進んだ一方、普及には品質の高い細胞を再現性よく選別し、低コストで大量に安定供給する体制が必要だと説明されています。
仕組み・要点
細胞の選別には、細胞から得られる情報量と、分離にかかる速度の両立が課題とされてきました。従来は、選別の目印として抗体などで細胞を染色する必要がありました。染色せずに分離できれば、細胞の状態への影響を抑えられる可能性があります。
シンクサイトが開発する方式は、特殊な構造化照明で細胞を照射し、構造情報を短時間で一次元データとして取得します。そのデータから機械学習モデルがリアルタイムで細胞を識別し、細胞へのダメージを抑えたマイクロ流体デバイスで分離します。人が見て判別できる画像に再構成する必要がないため、高速処理と無染色での分離が可能になるとしています。同社はこれをゴーストサイトメトリー技術と呼び、2018年に科学誌Scienceで成果を発表したとしています。
産業での位置づけ
シンクサイトの発表では、活用領域は再生・細胞医薬、医療検査診断、創薬の3つです。日立の発表は、再生・細胞医薬品の市場が2020年の6,300億円から2025年に3.8兆円に拡大するとの見込みを示しています。細胞分析・分離装置は、こうした製造工程で品質の高い細胞を選ぶ役割を担います。
スタートアップの取り組み
- シンクサイトは、東京大学と大阪大学の技術をもとに2016年2月に設立され、2021年5月にシリーズBで総額28.5億円の資金調達を実施しました(発表、2021年5月)。資金は共同研究の推進、細胞分析・分離システムの開発加速、米国市場での事業開発などに充てるとしています。2023年8月には、AI駆動型の細胞分析・分離装置VisionSortと、フィンランド分子医学研究所(FIMM)の白血病サンプルのデータベースを組み合わせ、血液がんの病態把握をめざす研究提携を発表しました(発表、2023年8月)。
- シンクサイト株式会社は、日立製作所とAIを活用した細胞分析・分離システムの共同開発を開始しました。日立の装置を安定稼働させるノウハウや量産化技術と、シンクサイトの細胞分離技術を組み合わせ、再生・細胞医薬品の製造コスト低減をめざします(発表、2020年7月)。