ケミカルルーピング

Chemical looping (CLC)

燃料を空気と直接触れさせず、金属酸化物(酸素キャリア)が運ぶ酸素で酸化する燃焼技術。排ガスがCO2と水蒸気になるため、冷却で高純度のCO2を回収しやすく、発電や水素製造と組み合わせる開発が進む。

詳細

概要

ケミカルルーピング燃焼(CLC)は、石炭などの燃料を空気で直接燃やさず、金属酸化物の粒子(キャリア)が持つ酸素で燃料を酸化させる技術です。NEDOの事業資料は、還元された金属は空気で再酸化されて再利用され、反応生成物はCO2とH2Oになるため、冷却によって高純度のCO2を回収でき、分離のためのエネルギー損失を伴わないCO2回収型の燃焼技術と説明しています。

仕組み

NEDOの2025年の成果報告資料では、酸化鉄を含む粒子をキャリアとして、循環流動層の中で各塔を循環させる構成が示されています。

  • 空気反応塔(AR): 空気中の酸素でキャリア(FeO)を酸化する
  • 燃料反応塔(FR): バイオマスや有機廃液などの燃料をキャリアの酸素で酸化し、CO2と水蒸気を出す
  • 水素生成塔(HR): 水蒸気とキャリアを反応させて水素を作る

発熱は系外へ出して発電に使います。1つのプロセスから電力、水素、CO2など複数の製品を得ることを「ポリジェネレーション」と呼びます。

制度と開発の位置づけ

NEDOは2015年度から2017年度に「CO2分離型化学燃焼石炭利用技術開発」(通称ケミカルルーピング)を実施し、石炭利用のプロセス実現に技術的な目処をつけましたが、経済性や市場が不透明なため一時中断しました。その後、燃料の多様化と有価物の併産を加えた「CO2分離・回収型ポリジェネレーションシステム技術開発」を始めています。2020年度から2024年度のケミカルルーピング燃焼ポリジェネレーション技術開発では、CO2分離・回収コストを1,000円台/t-CO2と見通せる設備設計技術に目処をつけることが目標でした。参加機関は、カーボンフロンティア機構、大阪ガス、JFEエンジニアリングと、新潟大学、中央大学、東京科学大学、群馬大学です。

スタートアップの取り組み

ライノフラックスは、京都大学の研究成果をもとに2024年4月に設立された企業で、「湿式ケミカルルーピング技術」を開発しています。同社の発表によると、バイオマスを水溶液に溶かし、触媒でCO2に酸化して化学エネルギーを取り出し、それを電気に変える非燃焼・低温のプロセスです。1kWプロトタイプで累計240時間超の運転を達成し、副生するCO2の純度は99.9%以上としています(発表、2026年5月)。上で述べた金属酸化物を循環させる方式とは構成が異なります。

NEDOの2026年度の採択資料では、同社は2,400時間以上の連続運転と不純物課題の解決を目標に、パイロット機への拡張に取り組みます。事業化計画は、2029年度に100kW級の商用機を初号機として納入し、500〜2,000kW級へ広げるとしています。プレスリリースでは、商用初号機は2028年を目指すとされています。

一次情報