企業価値担保権

Enterprise value security interest

事業の将来性や無形資産を含めた事業全体を担保にして融資を受けられる、新しい担保制度。事業性融資の推進等に関する法律に基づき、2026年5月25日に施行され、地域金融機関を中心に設定が始まっている。

詳細

概要

企業価値担保権は、不動産担保や経営者保証に過度に頼らず、事業の将来性にもとづく資金調達を可能にするために創設された担保制度です。金融庁の資料では、有形資産に乏しいスタートアップや、経営者保証のために思い切った事業展開をためらう事業者の資金調達を円滑にする制度と位置づけられています。

仕組み

金融庁の「制度の概要」では、次の考え方が示されています。

  • 貸し手は、過去の財務情報だけでなく、技術・ノウハウや事業計画などの定性・将来情報を評価して融資する。
  • 例として、技術力を持つスタートアップや、不動産の担保評価が低く改装のための融資を受けにくかった老舗の料亭が挙げられている。
  • 貸し手の事業への関心が高まり、タイムリーな経営改善支援も期待される。

株式会社マイクロニティの発表では、事業に関連する資産全体へ一括で担保を設定でき、個々の資産に個別に担保を設定する従来の方法より事務負担と費用の軽減が期待されると説明されています。信託会社等の監督指針も同日から適用され、登記の申請方法は法務局のサイトに掲載されると金融庁のページに案内されています。

施行と利用状況

制度は令和8年(2026年)5月25日に施行されました。TRUSTART株式会社が商業登記受付帳をもとに独自に調べた結果では、設定登記は5月に20件、6月に5件、7月に6件で、5〜7月の累計は31件、確認された都道府県は15でした。地域金融機関による利用が中心で、スタートアップに限らず業歴の長い企業にも広がっていると報告されています。これは同社の独自調査であり、公式統計ではありません。

スタートアップの取り組み

  • TRUSTARTは、不動産ビッグデータを提供する不動産テック企業です。企業価値担保権の設定状況を継続的に調べ、制度開始3か月目で累計31件・15都道府県に広がったと公表しました(発表、2026年9月)。
  • マイクロニティは、静岡銀行から企業価値担保権を活用してM&A資金の一部として5億円を調達し、IBT総合研究所の全株式を取得して事業承継を完了したと発表しました。創業10年以内のスタートアップが譲受側となった事例として国内初としています(発表、2026年10月)。

一次情報