ゴーストサイトメトリー

Ghost cytometry

細胞の画像を作らず、1画素の検出器が拾った光の信号を機械学習で直接判別し、細胞を高速に見分けて分取する技術。東京大学を中心とする研究で2018年に Science で報告された。

詳細

概要

ゴーストサイトメトリーは、細胞の画像を再構成せずに、細胞が流れるときの光の信号パターンをそのまま機械学習で判別し、細胞を識別・分取する技術です。2018年6月に科学誌 Science で報告されました(Ota et al., Science 360, 1246–1251)。論文では、特定のバイオマーカーを使わずに、細胞の形態をもとにした高精度で高スループットの分類と選択的な分取ができるとされています。

仕組み・要点

東京大学の発表によれば、仕組みは次のとおりです。

  • 細胞を1つずつ細い流路に流し、その下に置いた1画素の検出器(シングルピクセル)で、細胞が発する蛍光の光を測ります。
  • 細胞は、固定した光のパターンの中を通過するため、時間とともに変化する信号が得られます。
  • 機械学習の回路が各細胞種の信号パターンを学習し、約10マイクロ秒で細胞を識別して、適切な分取経路に導きます。
  • 必要に応じて、計測データから通常の2次元画像を再構成することもできます。

名前の「ゴースト」は、ゴーストイメージングという、空間分解能のある検出器を使わずに物体の像を得る手法に由来します。当時の発表では、1秒あたり1万個を超える細胞を識別でき、毎秒数千個の速度で分取できるとされ、顕微鏡を使った専門家の分取は毎秒10個未満であるのと比べられています。なお、当初の手法は蛍光色素による染色を使っていました。

位置づけ

創薬では、標的のタンパク質を決めず、細胞の形態や機能の変化を指標に物質を探す「表現型スクリーニング」があります。従来は細胞の染色による偏りが生じるとされ、染色せずに細胞を見分けて分取できる方法は、これを補うものとして期待されています。再生医療では、移植用の細胞の純度を高める検査・選別に使う研究が進んでいます。

スタートアップの取り組み

  • シンクサイト株式会社は、東京大学の研究者らが設立し、この技術の事業化を担っています。AI を使ったイメージ認識型の高速細胞判別・分取技術として、染色せずに細胞の画像データだけで判別と分取ができるとしています。Axcelead Drug Discovery Partners とは、150万以上の化合物ライブラリを持つ同社と新しい表現型スクリーニング技術を共同開発する契約を結びました(発表、2022年12月)。ビジョンケアグループとは、網膜の細胞治療に向けた研究提携を発表しています(発表、2022年12月)。
  • シンクサイト(同社の別の掲載)は、細胞分析分離装置 VisionSort を2023年6月に販売開始しました。ラベルフリーの細胞解析・ソーティング装置の先行利用プログラムも2022年12月に発表しています(発表、2022年12月)。

一次情報