マイクロRNA
microRNA (miRNA)
詳細
概要
マイクロRNA(microRNA、miRNA)は「小さなRNA」の一種です。mRNAと異なり、それ自体はタンパク質の設計図にならず、標的となるmRNAからのタンパク質合成(翻訳)を抑えることで、発生や分化、細胞増殖などの生命現象を精密に制御しています。東京大学の発表では、がんなど重篤な疾患との深い関わりも知られており、治療法の研究も進んでいるとされています。
仕組み
microRNAは単独では働かず、いくつかのタンパク質と複合体を作って機能します。中心となるのはmicroRNAに直接結合するArgonauteタンパク質と、それに結合するGW182タンパク質です。東京大学の研究グループは、ショウジョウバエを用いてGW182がない状態での働きを調べ、標的遺伝子の発現抑制に3つの経路が寄与すると報告しています(東京大学の発表)。
- GW182依存的なmRNA末端のPoly(A)鎖の分解
- GW182依存的な翻訳抑制
- GW182非依存的な翻訳抑制
別の研究(2014年10月の発表)では、microRNAが翻訳開始因子の一つeIF4Aを標的mRNAから追い出すことで、リボソームが呼び込まれず翻訳が阻害されることが示されました。この仕組みはショウジョウバエとヒトの両方で確認され、生物種を超えて保存されていると考えられています。
診断・創薬への応用
がん細胞に特異的に多く発現しているマイクロRNAは、標的を見分けるバイオマーカーとして利用できます。また、尿中の細胞外小胞に含まれるマイクロRNAを測定する検査技術も開発されています。Craif株式会社の研究チームは、健康な成人7名の尿検体を用いて保存安定性を評価し、尿は−80℃で最長12か月、細胞外小胞とRNAは−80℃で最長3か月保存してもmiRNA量と個人ごとの発現プロファイルが維持されたと報告しています。これにより、収集した検体をまとめて解析でき、大規模研究の効率化や測定コストの最適化が期待されます。
スタートアップの取り組み
Craif株式会社は、マイクロRNA解析とAIによるがん早期検出技術を開発しています。尿中マイクロRNAの長期保存安定性を評価した論文を発表し(発表、2026年10月)、第26回日本抗加齢医学会総会では、尿中マイクロRNAから生物学的年齢を推定する「エイジングクロック」の研究成果を発表しました(発表、2026年7月)。同発表では、18,698件の検体と33種類のマイクロRNAを用い、暦年齢の推定で平均誤差3.2歳としています。
東京核酸合成は、東京大学の研究成果をもとに2022年4月に設立され、がん細胞に多く発現するマイクロRNAを標的を見分ける目印として利用する、ヘアピン状の核酸医薬TKG-001を開発しています。がん細胞内で免疫系が異物と認識する核酸の集合体を作り、cGASを介して自然免疫を活性化させる仕組みです(発表、2024年1月)。