パワー半導体
Power semiconductor
詳細
概要
パワー半導体は、自動車・産業機器、電力・鉄道、家電など生活に関わるさまざまな電気機器の制御に使われる半導体です。カーボンニュートラルに向けた電化社会では、こうした機器の省電力化が極めて重要とされています。経済産業省のグリーンイノベーション基金事業の計画によると、世界の電力需要の約半分がモーターによるもので、モーターを駆動するインバータの効率を1%改善するだけでも大きな省電力効果が期待されます。ハイブリッド車の電力損失の約20%がパワー半導体による損失、サーバの消費電力の約25%がパワー半導体を使った電源の損失といわれています。
材料と技術の要点
従来のシリコン(Si)に対し、省エネ化の技術として次世代パワー半導体の炭化ケイ素(SiC)、窒化ガリウム(GaN)、酸化ガリウム(Ga2O3)が挙げられています。同計画では、SiCは2020年代半ばから後半にかけて電動車や充電インフラ、GaNは2025年のサーバ内電圧変換器や2030年のデータセンター向け電源で需要拡大が予想されるとしています。Ga2O3は耐圧に関する高いポテンシャルを持つ一方、熱伝導に大きな課題があり、適した用途がまだ見いだせていないと記されています。SiCウェハはSiウェハより生産コストが高いことが課題で、現在は主に昇華法で量産されています。
市場と制度
同計画は、パワー半導体産業の市場規模を現在約3兆円、2030年に5兆円、2050年に10兆円と見通し、日本企業が29%のシェアを持つ強みのある分野としています。NEDOは2022年2月、グリーンイノベーション基金事業「次世代デジタルインフラの構築」(予算総額1376億円、2021〜2030年度の予定)に着手すると発表しました。SiCとGaNの次世代パワー半導体を対象に、変換器などの電力損失を50%以上低減し、従来のSiパワー半導体と同等の低コストを実現することを目標としています。
スタートアップの取り組み
- Patentix:ルチル型二酸化ゲルマニウム(r-GeO2)のエピウエハを研究開発しており、デプレッション型r-GeO2 MOSFETのトランジスタ動作の実証に成功したと発表した(発表、2026年3月)。
- UJ-Crystal:名古屋大学発で、溶液成長法による超高耐圧のp型SiCウェハを開発している。2026年7月31日に第三者割当増資で総額4.3億円の調達を発表した。
- 株式会社FOX:東北大学発で、酸化ガリウム(β-Ga2O3)ウエハの低コスト量産化に向けて、低損失・高性能なパワーデバイスの研究開発を進めている。
- U-MAP:名古屋大学発で、繊維状窒化アルミ単結晶「Thermalnite」を軸にTIMシートやグリースなどの放熱材料を開発・製造・販売する。