量子化学計算
Quantum chemistry calculation
量子力学に基づいて分子や材料の電子状態を計算し、エネルギーなどの性質を求める計算。系が大きくなると古典計算機では難しく、量子コンピューターの有望な応用先とされる。
詳細
概要
量子化学計算は、量子力学に基づいて分子や材料の電子の状態を計算し、エネルギーなどの性質を求める計算です。創薬や材料開発では、候補物質の安定性や反応のしやすさを実験の前に見積もる目的で使われます。
課題は計算量です。変分量子固有値ソルバー(VQE)を提案した論文は、量子系の固有値を求める問題は、系の大きさとともに指数的に難しくなるため古典計算機には困難だと述べています。JSTのさきがけ研究報告でも、量子化学計算は量子コンピューターの有望な応用先と位置づけられています。
仕組み
量子コンピューターで分子のエネルギーを求める代表的な方法が二つあります。
- 量子位相推定(QPE): Aspuru-Guzikらの論文は、位相推定を使えば原子や分子の基底状態エネルギーを、必要な資源を多項式的な増加に抑えて計算できることを示しました。水とLiHの計算を量子コンピューターのシミュレーターで検証し、読み出しに必要な量子ビットを約20から4に減らす再帰的な方法も示しています。
- 変分量子固有値ソルバー(VQE): パラメーターを持つ量子状態を量子コンピューターで作り、古典コンピューターで最適化する組み合わせです。位相推定よりコヒーレンス時間が短くて済みます。2013年の論文では、小型の光量子プロセッサーでHeH+分子の基底状態エネルギーを化学的精度で求めています。
JSTの報告は、誤り訂正が完全には整備されていない「ニアターム」の量子コンピューターでは、位相推定の実装は難しく、VQEが実装に最も期待される手法だと整理しています。
スタートアップの取り組み
Quemixはテラスカイの連結子会社で、量子コンピューターのアルゴリズムとソフトウェアを研究開発しています。量子化学計算アルゴリズム「PITE」を開発して特許を取得しており、公式サイトではクラウド型の材料計算プラットフォーム「Quloud」も提供しています。
Tres Alchemixは2023年4月設立の創薬AI企業で、マルチモーダル・マルチオミクスのデータと独自の量子化学計算を統合した「ヒト in silico モデル」で候補化合物の薬効と副作用を予測し、がん領域を中心に低分子医薬品を設計しています。