量子インスパイアード最適化
Quantum-inspired optimization
詳細
概要
量子インスパイアード最適化は、量子コンピューターの研究から得た発想を取り入れつつ、量子ハードウェアを使わず、GPUなどの古典的なコンピューター上で組合せ最適化問題を解く手法です。金融、物流、バイオ、AIなどには、膨大な選択肢から最適な組み合わせを選ぶ問題が多くあります。問題が大きくなると組合せの数が指数関数的に増えるため、通常の方法では短時間で解くことが難しくなります。
仕組み
代表例が、東芝の「シミュレーテッド分岐マシン」を核にした「SQBM+」です。日本マイクロソフトの2022年6月の発表によると、問題を二値表現であるイジングモデルに写像し、その基底状態を探すことで解きます。SQBM+では2種類のアルゴリズムが選べます。
- bSB(Ballistic Simulated Bifurcation): 短時間で良好な解を得ることを重視した高速な方式
- dSB(Discrete Simulated Bifurcation): より高精度な解を求める方式
問題に応じてどちらかを自動で選ぶ機能もあります。同発表によると、Azure Quantumでの提供開始時の対象は最大10万変数の問題で、GPUで高速に動くよう最適化されています。想定用途として、ポートフォリオとリスク管理、分子設計、ルーティングやスケジューリングが挙げられています。性能の数値は提供元の発表値です。
産業での位置づけ
量子ハードウェアの誤り耐性や規模に制約がある間も、古典計算機上で動くため、クラウドやオンプレミスのGPUですぐ使える点が特徴です。上記の例のように、組合せ最適化問題として定式化できる業務や研究課題が対象になります。
スタートアップの取り組み
創薬分野での利用例があります。AOI Biosciencesの名で発表された検証では、Revorfと東芝デジタルソリューションズが、タンパク質の立体構造情報からアロステリック制御の仕組みを組合せ最適化問題として定式化し、SQBM+で解いて制御部位を予測しました。KRASを含む複数のタンパク質で既知の制御部位と比べ、従来の計算手法では特定できなかった部位をより正確に予測できたとしています(発表、2022年6月)。今後は製薬企業などに結果を開示し、in vitro実験で有効性を確かめる予定とされています。
AOI Biosciencesは、不妊・不育症向けの抗体検査に加え、量子着想型コンピューティングを使った創薬手法を開発しています。Revorfは、東芝デジタルソリューションズと量子インスパイアード最適化を用いたアロステリック創薬を研究しています。