不育症
Recurrent pregnancy loss
詳細
概要
不育症は、妊娠は成立するものの、流産や死産を繰り返して生児が得られない状態です。厚生労働省の研究費で作られた「不育症相談対応マニュアル」(AMED研究班の「不育症管理に関する提言2021」に基づく)は、日本産科婦人科学会の定義を引いたうえで、すでに子どもがいても2回以上の流産・死産の既往があれば不育症に含めるとしています。不育症は流産・死産の回数だけで決まる概念で、検査で異常が見つからなくても不育症と呼びます。
関連する用語として、流産を2回以上繰り返す「反復流産」、3回以上繰り返す「習慣流産」があります。流産は妊娠22週未満の胎児が母体から出ることで、12週未満が早期流産、12週以降22週未満が後期流産です。
頻度とリスク因子
同マニュアルによると、流産は妊娠の10〜20%に起こり、年齢とともに増えます。厚生労働科学研究班の調査では、妊娠歴のある35〜79歳の女性のうち、3回以上の流産は0.9%、2回以上は4.2%でした。
妊娠初期の流産の大部分(60〜80%)は胎児の偶発的な染色体異常です。繰り返す場合は、100%流産するわけではないため「原因」ではなく「リスク因子」と呼ばれる要因が関わることがあります。主なものは、子宮形態異常、抗リン脂質抗体症候群、夫婦の染色体構造異常、甲状腺機能異常や糖尿病などの内分泌代謝異常、血液凝固異常(プロテインS欠乏症、第XII因子欠乏症など)、母体の高年齢です。AMED研究班の1,340例の解析では、抗リン脂質抗体陽性8.7%、甲状腺機能異常9.5%、子宮形態異常7.9%などで、リスク因子不明は65.2%でした。
検査と治療
1回の流産ではリスク因子の検査は通常必要なく、2〜3回以上繰り返す場合に検査が勧められます。ただし妊娠10週以降の流産や死産、早期新生児死亡では、1回でも検査の意義があるとされています。治療はリスク因子ごとに異なります。たとえば抗リン脂質抗体が陽性の場合は、血栓予防のためにヘパリンを使うことがあります。リスク因子が見つからなくても、次の妊娠の成功率は高いという報告があります。
スタートアップの取り組み
AOI Biosciencesは、不妊・不育症の診断に用いる抗体の血液検査を提供しています。β2GPIネオセルフ抗体検査が、東京大学医学部附属病院の申請により先進医療として認定されたと発表しました(発表、2025年6月)。発表では、この抗体が不育症の原因の約2割を占める流産や血栓症を引き起こすとし、検査陽性で対応する治療を受けた群の生児獲得率は約1.7倍以上だったとしています(同社の発表による数値です)。
Revorfは、β2GPIネオセルフ抗体検査を2022年から国内の医療機関に提供しており、東芝デジタルソリューションズと量子インスパイアード最適化を用いたアロステリック創薬の研究も行っています。